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Hiroshi Ishiyama
Cisco Employee
Cisco Employee

音声ネットワークにおいては、通話の際に自分の声が遅れて聞こえてくる
エコーが問題になる場合があります。VoIPによる音声ネットワークの場合、
音声のパケット化による遅延が大きいため、エコーによる音声品質の劣化が
より顕著になります。この問題に対処するため、IP Phone、Voice GW等の
VoIP 機器には、エコーキャンセラーが搭載されています。

このドキュメントでは、一般的なエコーキャンセラーの動作の仕組みに
ついて解説します。また、エコーキャンセラー機能の一部であるNLP
(Non Linear Processor)によって発生する音切れ問題についての
説明を行います。

 

1.エコーキャンセラーの動作について

https://supportforums.cisco.com/sites/default/files/attachments/document/ec-nlp1_0.jpg

上図は一般的なエコーキャンセラーの動作の概念図です。
電話網(PBX、電話機、受話器)から帰ってくるエコーの大きさと
遅延時間は、コールの接続先により変動します。
Adaptive Filterは、電話網から帰ってくるエコーの予測を行い、
元の信号からエコーを打ち消すための逆位相の波形をを生成し、
電話網からの波形に合成してエコーを減少させます。

元の信号からの減衰レベル、遅延時間等のパラメータを調整する
時間は、コンバージェンス時間と呼ばれます。コンバージェンスは
コール開始時に行われます。減衰レベル等の条件が変動した場合は、
再度コンバージェンスが行われますが、通常、1つのコール内では
条件は変動せずに安定しています。

エコーの波形は、伝送路、マイク・スピーカー等の特性により
歪みが生じるため、Adaptive Filterだけでエコーを完全に消去する
ことはできません。エコーキャンセラーには、この残留エコーを
消去するために、NLP(non-linear processor)の機能が搭載されています。
VoIP網からのシングルトークの状態において、NLPは電話網からの音声
を抑制し、残留エコーを消去します。電話網側からの音声が完全に
無音になると、VoIP側の通話者が不自然に感じる場合があります。
エコーキャンセラーは、NLPの動作時にコンフォートノイズを生成し、
この不自然さを緩和します。

https://supportforums.cisco.com/sites/default/files/attachments/document/ec-nlp2_0.jpg

上図は、コールの状態に依存したNLPの動作の変化を表しています。
ダブルトーク(VoIP網と電話網の両側で話している場合)の状態では
NLP機能はオフの状態です。残留エコーは存在しますが、電話網側からの
音声が残留エコーより大きいため、エコーは目立ちません。
シングルトーク(VoIP側でのみ話している場合)の状態では残留エコーが
目立つため、NLPが機能して電話網側からの音声を抑制します。

https://supportforums.cisco.com/sites/default/files/attachments/document/ec-nlp3_0.jpg

電話機が環境音の比較的大きな場所(マシンルーム、屋外、BGMの流れている
部屋)等に設置されている場合を考えます。
シングルトークの状態でNLPが動作すると、環境音が急になくなるため、
通話者は音切れが発生していると感じます。

NLPは残留エコーを防ぐための有用な機能ですが、NLPによる無音(音切れ)を
不快に感じる場合、NLPの機能を停止した方が良い場合もあります。

 

備考:Cisco Voice GWでは、"no non-linear" コマンドを設定することにより
    NLP機能を停止できます。
    Cisco IP Phoneに関しては、NLPを停止する機能はありません。
    また、IP Phoneの機種により、DSPファームウェアの実装が異なり、
    NLPによる音切れの発生度合いが異なります。
    TACでは、IP Phoneを購入する際、事前にIP Phoneの音声品質を
    確認することを推奨しています。

 

2.NLPによる音切れ問題の考え方

VoIPシステムにおける音切れの事象は、様々な原因で発生します。

 

(音切れ問題の発生要因)

- VoIP網の品質劣化(RTPパケットのドロップ・遅延・ジッタ)
- VAD (Voice activity detection) 機能の動作
- 電話網側の音切れ(携帯電話、IP電話サービスの普及により増加)
- NLP (Nonlinear processor) 機能の動作

音切れの原因を特定するには、ユーザへのヒアリングを行い
発生状況を出来るだけ正確に把握する必要があります。

 

(音切れの発生状況による原因の推定)

音切れがランダムに発生する場合、VoIP網の品質劣化が疑われます。
通話相手からの音量の変化に関連している場合は、VAD機能が疑われます。
特定の携帯電話網、IP電話サービスとの通話で発生する場合は、電話網側の
問題である可能性が高くなります。
自分が話したタイミングで相手からの音声が途切れる場合は、NLP機能が
疑われます。電話網(IP電話サービス等)側にVoIP機器が使用されている場合、
電話網側でNLPによる音切れが発生する可能性もあります。

備考:厳密に調査を行う場合、VoIP側のパケットキャプチャ、Voice GWのログ・
    PCMキャプチャ、IP Phoneのログ等を取得して解析する必要があります。

 

(NLPによる音切れが発生した時の被疑箇所の推定)

https://supportforums.cisco.com/sites/default/files/attachments/document/en-nlp4_0.jpg

https://supportforums.cisco.com/sites/default/files/attachments/document/ec-nlp5_0.jpg

https://supportforums.cisco.com/sites/default/files/attachments/document/ec-nlp6_0.jpg

上図は、一般的なVoIPのシステム構成でNLPによる音切れが発生する
パターンを表しています。

IP Phone間の通話または Voice GW 間の通話においてNLPによる音切れが
発生した場合、リモート側の IP Phone または Voice GW 機器上の
NLPの動作が関与しています。

同様にIP Phone とVoice GW間の通話の場合、IP Phone側で音切れが
発生する場合はVoice GWのNLPが、電話網側で音切れが発生する場合は
IP Phone側のNLPが関与しています。

備考:音切れ問題にCisco Voice GWのNLPの関与が疑われる場合、
    切り分け手段として、一時的にNLP機能を停止させる方法が
    考えられます。Voice GWに "no non-linear" コマンドを設定して
    事象が改善する場合は、NLPによる音切れであると考えられます。
    NLP機能を停止し状態で、VoIPシステムを運用する場合、
    "input gain"、 "output attenuation" コマンドを使用して
    音声レベルを調整し、必要な通話音量を維持しながら、
    残留エコーができるだけ目立たないように調整します。

 

まとめ

音声通話において音切れの発生は、通話品質に大きな影響を与えます。
音切れの問題は、エコーキャンセラーのNLPの機能が原因で発生する
場合があります。
この問題に対処するため、エコーキャンセラーの動作原理とNLPによる
音切れの発生する仕組みを理解することが重要になります。

 

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