CUCMサーバに障害が発生し(おもにハードウェア等の障害が疑われるような事象)
サーバーのリスタートによっても事象が回復しない場合、また電源障害などにより
サーバの意図しない停止が発生した場合は、リカバリディスクを利用して事象の解決を
行うことができる場合があります。
ここではリカバリディスクとは何か、利用用途、使用法について説明させていただきます。
1.リカバリディスクとは何か
リカバリディスクとはCUCMのバージョン5以降に用意された、サーバ障害発生時にサーバが起動
しなくなってしまった時に利用する障害回復用のツールとなります。このツールを利用することに
より、サーバを起動可能な状態に戻します。ただし、あくまでもサーバを起動可能な状態に
戻すためのツールですので、サーバ上のシステムが完全に動作しているかについては、リカバリ後に
あらためて判断する必要があります。このことは下記DDTSに明記されております。
CSCth53322 Document the need for system rebuild after file system repair
Symptom: in a running state but part of the file system is corrupt causing certain features to fail.
Conditions:
This can occur if a server goes down and needs to be recovered using the recovery disc.
Workaround:
Rebuild the server if the file system becomes corrupt.
サーバダウン時にリカバリディスクを使ってシステムを回復した場合、システムの動作を
チェックして問題があった場合は、サーバのリビルトを行わなければならない。
上記の説明で明らかな通り、リカバリディスクにはシステムを購入時の状態に戻す
という機能はございません。あくまでも起動不能な状態からのリカバリ(回復)を行う
ツールという位置づけです。
2.リカバリディスクの利用用途
リカバリディスクは独自OSを持っておりますので、起動不能におちいったサーバ上でも
起動することが可能です。起動すると以下のような作業が行えます。
S Swap -- アクティブ側とインアクティブ側の切換え
CUCMサーバはアクティブ側とインアクティブ側の二つの領域を持ち、それぞれに
動作可能なOSイメージを持つことができます。仮にアップグレード後に動作が
おかしくなってしまったなどの問題が起きた場合でも、アップグレード前のバージョン
に戻すことにより、障害からの回復が可能です。スイッチバージョンと言われる
動作によりアクティブ側とインアクティブ側の切換えを行っています。
ただし、サーバが起動しなくなってしまった場合は、Cisco Unified Operating Systemの
GUIから行うスイッチバージョン自体ができなくなってしまいます。
この場合に、リカバリディスクからスイッチバージョンを行うのが、このSwapコマンドです。
F fsck -- ファイルシステムの整合性検査・修正
システムが予期せぬシャットダウンを行ってしまったなどの理由によりまれにCUCM
の利用しているファイルシステム自体がおかしくなってしまうことがあります。この
ファイルシステム自体の整合性を検査し、問題があれば修正を行うのがこのfsck
コマンドです。ただし、全てのエラーを修正できるわけではなく、また消えてしまった
ファイルを復活させるという機能はありません。あくまでもOSからのファイルシステムと
して見た場合の整合性を修復するものです。
V Verify -- HDDのパーティションレイアウトの整合性検査・修正
上記同様の理由で、HDDの管理領域に問題が出てしまう場合があります。この場合、
fsckコマンドを利用することもできない場合があります。その場合には、このVerify
コマンドを利用して、HDDの管理領域情報の修正を試みます。
3.リカバリディスクの使用法
A.まずはご利用のCUCMに対応しているリカバリディスクを入手する必要があります。
CCO(cisco.com)のソフトウェアダウンロードセンターからリカバリディスクのISO
イメージを入手します。
ソフトウェアダウンロード > Voice and Unified communication >
IP Telephony > Call control > Cisco Unified Communcations Manager (CallManager)
と展開していくとCUCMバージョンの一覧が表示されます。ここで、ご利用の
バージョンを正しく選択してください。バージョンごとのファイルが表示されますので
Unified Communications Manager Recovery Software を選択するとリカバリディスクの
ダウンロードページとなります。表示されているうち最新バージョンのものを選択して
X.X.X.X0000-X_recovery.iso形式のISOファイルをダウンロードしてください。
B.ISOファイルをCD-RにCD/DVDライティングソフトを利用して焼きつけてください。
もちろん、OS搭載の機能を利用されても結構です。
CD/DVDライティングソフトにはフリーのものもいくつかあります。(Windows版)
C.事象が発生しているサーバをリスタートします。可能であればリセットスイッチを
利用し、サーバがリスタートしている間に素早くリカバリディスクをサーバーの
CD/DVD-ROMドライブにセットします。(リセットスイッチでのリセットができない
場合は電源ボタン長押しによりシャットダウンを行い、20秒程度待ってから再度
電源を入れて起動してください。)
D.MCSサーバはCD/DVD-ROMドライブにディスクがあると内蔵HDDよりも優先して
起動する設定となっておりますので、リカバリディスクから起動イメージを読込ます。
万一、お客様でサーバBIOS内の起動順序を変更されている場合は、CD/DVD-ROM
ドライブ優先に設定を変更した後、起動を試みてください。
E.サーバのスペックにもよりますが、一分程度後にLinuxベースのOSで構成された
リカバリディスクのOSが立ち上がり、リカバリディスクで利用できるメニューが
表示されます。メニューは以下のようなものです。
*******************************************************************************************
*** Welcome to Cisco Unified Communication Manager Recovery Disk
*** Version X.X.X.X0000-XX
*** Copyright - Cisco Sytems, INC. 200X
***
*** Active partition : PARTITION A - X.X.X.X000-XX
*** Inactive partition : PARTITION B- X.X.X.X000-XX
***
*** Please enter one of the following options:
***
*** [S]|[s] Swap the active and inactive partitions.
*** [W]|[w] Windows pre-installation setup.
*** [F]|[f] Check and correct disk file systems.
*** [V]|[v] Verify the disk partitioning layout.
*** [Q]|[q] Quit this recovery disk program.
*******************************************************************************************
F.メニューが表示されましたら実行したいコマンドを選んで入力します。
スイッチバージョンを行いたいのであればS,ファイルシステムの整合性を検査・修正
したいのであればF,HDDの管理領域の整合性を見るのであればV,リカバリディスクを
終了するのであればQを入力してエンターを押します。
G.その後はメニューによって操作が異なります。メニュー内容に応じて適切な入力を
行ってください。
H.操作が終了してメニューに戻った後にリカバリディスクを終了します。Qを入力して
エンターです。リカバリディスクOSの終了処理が行われ最後に
you may safely reboot your system
と表示され、動作が停止したらサーバのリセットボタンを押してリカバリディスクを
ドライブから抜きます。
I. サーバが通常通り起動すれば実行完了です。サーバ起動後、電話システムの動作に
問題がないかを確認してください。先に書いた通り、リカバリディスクはあくまでも
サーバが起動しないという問題を解決するためのものですので、システムを完全に
修復できるわけではありません。そのため、動作の確認は必要です。
また、リカバリディスク適応後の問題の度合いによっては、サーバのリビルトおよび
バックアップからのデータのリストアを検討する必要があるかもしれません。
以上です。